中国新聞


診療報酬改定 どうなる小児医療
広島赤十字・原爆病院の西副院長に聞く


 ■ほど遠い医師不足解消 少子化の視点必要

 二〇〇六年度の診療報酬改定は、全体として過去最大の引き下げとなる中で、小児科の報酬は引き上げられた。しかし慢性的な医師不足や病院小児科の縮小・廃止が目立つ医療現場では、「焼け石に水」にすぎないとの見方も強い。広島赤十字・原爆病院の西美和副院長兼小児科部長に、小児医療の現状を聞いた。(編集委員・山内雅弥)

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「このままでは、若い医師が小児科に入らなくなる」と話す西副院長

 ―小児科の診療報酬引き上げに対する評価は。

 日本小児科学会としては、乳児医療の充実など本人負担の軽減を要望してきた。しかし、今回の改定は救急医療が中心だった。「病院小児科の減少に、歯止めをかけるにはほど遠い」というのが、学会の見方だ。

入局は半分以下
診療報酬改定のポイント
 (1)乳幼児の深夜診療に対する加算増額
 (2)小児入院医療管理料の大幅引き上げ
 (3)地域の病院勤務医や診療所小児科医が連携した夜間・休日診療の要件緩和と、24時間診療体制への報酬加算
 (4)新生児・乳幼児の手術に対する加算増額
 (5)新生児・乳幼児の検査や処置に対する加算増額
 (6)小児患者の食物アレルギー検査への保険適用

 ―病院小児科の現状は、それほど深刻なのですか。

 大学病院で後期研修をする若手医師の数が少なくなっている。中でも、小児科への入局者は、ピーク時の半分以下。一方、病院の小児科でも夜間・休日の救急に追われ、翌日の休みも十分に取れずに、身体的に疲れ果てた揚げ句、開業する医師が増えている。それでも都市部はまだいい方で、地方の状況は深刻だ。

 ―小児科が病院経営のお荷物≠ノなっているという指摘もあります。

 成人の診療科に比べて小児科の収益が少ないのは、もともと小児科の収益自体が少ないうえに、小児科患者が入院・外来とも減ってきていることが大きい。二、三年前に比べると、県内の主な病院の小児科入院患者は、軒並み10―20%減少している。開業小児科でも患者は減っている。

慢性疾患が減少

 ―なぜ、子どもの患者が減っているのですか。

 少子化で子どもの絶対数が減っているのに加え、疾病構造が大きく変化してきた。抗アレルギー剤やステロイド吸入薬の進歩で、ぜんそくなどの慢性疾患が減った。さらに、はしかや水痘、風疹(ふうしん)などの感染症も、予防接種や免疫治療の普及によって減少している。

 ―紹介状なしに病院にかかった時、初診料に上乗せされる「特定療養費」にも問題があると。

 特定療養費を徴収していない病院もあるが、広島市内の主な病院では千五百七十―二千六百二十五円。生活保護世帯や小児慢性特定疾患などの国の公費負担制度の受給対象者を除き、乳児医療対象の患者も含め、自己負担しなければならない。

 小児科の場合は、学校や幼稚園の薦めで直接来院したり、一人の子どもが受診していると、他の子も一緒に受診したりするケースも珍しくない。こうした場合には医療機関からの紹介状がないので、特定療養費の負担がかかり、病院小児科からの患者離れに拍車を掛けている。

 ―地域の小児医療を守るためには。

 子ども病院を一カ所につくるのではなく、大学病院も含めて地域の病院が専門領域をすみ分ける「地域小児医療センター」のような構想が、地域によっては、今後の流れになるだろう。小児医療は急性疾患が多く、入院日数が短い特性がある。明日の日本を支える子どもの患者が少ないのは良いことだ。小児医療は、他の診療科と同列に論じるのではなく、少子化対策や福祉の観点から考えるべきではないか。

(2006.2.22)


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