中国新聞


出産医療 春再開を断念
庄原日赤 医師確保難航


 産婦人科医の退職に伴い、昨年四月に出産医療を休止した庄原市の庄原赤十字病院は二日、医師の確保ができず、今春からの再開を断念したことを明らかにした。市内には出産できる医療機関がなく、市民団体が早期再開を求める約一万二千人の署名を藤田雄山知事に提出していた。広島県内では三市六町が同じ悩みを抱え、産婦人科医不足は深刻化している。(坂田一浩、武河隆司)

 会見した土肥博雄院長は、常勤医師二人の確保が再開の条件となることを挙げ、「広島大医学部の産婦人科教室に協力を依頼していたが、派遣は難しいとの回答があった」と述べた。

 将来の再開の可能性については明言を避けたものの「希望は持っている」とし、「市民の期待は、われわれも、大学側も理解している。引き続き広島大に協力を求める」と話した。

 同病院は、産婦人科医の慢性的不足に加え、二〇〇四年度から始まった臨床研修制度で本年度末に研修を終える医師が、わずかしか広島大の産婦人科教室に入局しない見通しであることなどが、医師派遣できない理由とみている。

 署名を集めた市民団体の小笠原洋行代表は「市民の切実な願いが届かず無念。妊娠した人は遠方の病院に行かざるを得ない。万一の際の心配は解消しない」と訴える。滝口季彦市長は「病院には引き続き、医師派遣へ尽力してもらいたい。市も呼び掛ける」と話す。

 同病院は従来通り、週二日の妊婦検診は続ける。同病院では年間約二百人が出産していたが、現在は三次市内の病院で出産するケースが多いとみられる。

 大竹市や江田島市も医師確保のめどは立っていない。昨年七月から出産できる病院がなくなった大竹市保健医療課の瀬田晃課長は「医師の確保が難しい。病院との交渉は堂々巡りで、若者流出が心配だ」と言う。

 一方、府中市では〇四年三月、JA府中総合病院が医師不足のため産婦人科を休診した。病院と市は、大学や県などに派遣を要請。福山市の民間病院の協力を得て同年六月、外来に限り週三日の診療を再開した。

 市内で出産可能な医療機関は、上下町の市立北市民病院だけ。市街地にはなく、市民の多くは福山市や尾道市などに通院している。

(2006.2.3)


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