中国新聞


巡回 保護者に疲労
地域の取り組みどう継続


 危険個所改善求める声も

 広島市安芸区の女児殺害事件をきっかけに、防犯パトロールや見守り活動、登下校の付き添いなど子どもを守る取り組みが広がっている。一方、継続して取り組むには無理が生じつつある例も出ている。一過性に終わらせないためにどうしたらいいのか。課題を探った。(森田裕美)

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保護者と一緒に地域安全マップを作る、三次市の田幸小の児童たち(12月3日)

 安佐南区内の小学校。児童の下校時間、校門周辺に保護者が一人、二人と集まってくる。「防犯ブザーを持たせているけど、いざというとき、子どもが使いこなせるか」と小一女児の母親(44)。自宅と学校は百メートルほど。だがなるべく迎えに来る。「がんじがらめにしたくはないけど、パトロールや防犯グッズも万全ではない」と不安が募る。

 市内のある学校は、冬休みの補充学習に「必ず保護者か保護者に代わる人の付き添い」を求めたため、家庭の事情で付き添いできない児童と不公平が生じると問題になった。別の学校では、社会見学から戻った際に通学路途中にある駅に着いたのに、集団下校をするため、一度、家から遠い学校まで引き返させられたことに、保護者から疑問の声が出た。

 事件後、子どもがブザーをぶら下げ、保護者が登下校に同伴する姿は多くの地域で当たり前になった。広島市教委の調査では、百四十校中九十四小学校で地域住民らが巡回を続ける。一方、事件があった安芸区矢野地区などでは、住民や保護者に疲れも出ていて、どうしたら継続できるか検討が始まった。

 「子どもの危険回避能力を養う」として、県や県警が進めている「地域安全マップ」作りは、事件を機に注目を集め、各地で取り組みが進んだ。県子どもの犯罪被害防止対策プロジェクトが確認した実施校は約三十校。独自に取り組むケースも相当数あるとみられる。冬休みの宿題でマップを作る学校もある。同チームは「製作の過程で子どもたちが地域のどこが危険かを点検し、学習することこそが大事」と今後も続ける方針だ。

 一方、子どもたちが見つけた危険場所の改善はこれから。マップ作りの教材用ビデオ制作を指導した広島経済大の松井一洋教授(災害情報論)は「防災の分野ではここ数年、行政と住民が補完し合い成果も上げてきた。防犯でも、子どもがマップを作って終わりではなく、改善方法を考え、着手するような、一歩踏み込んだ姿勢が求められている」と指摘する。

(2005.12.29)


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