「110番の家」今こそ活用 子どもたちが危険にさらされた時、助けを求めて駆け込む「こども110番の家」。県内でも4万軒以上、約9600台の車も登録している。相次ぐ児童を狙った事件を受け、有効に活用するための見直しや新たな取り組みが広がっている。(森田裕美) 親子で17日訪問/児童に笛配布
広島市安佐南区の山本小は、「家」の住人と児童が顔を合わせる取り組みを続ける。いざという時、場所が分からなかったり不安を感じたりしては意味がないからだ。 毎年、高学年児童が手紙や花などを持って訪ね、全校で交流会も開く。「地域の人の意識が高く、児童が卒業で入れ替わっても疎遠にならない」と仲本福恵校長。安芸区の女児殺害事件直後に開いた山本小の学校協力者会議でも、「子どもが駆け込むのを待つのではなく、『家』の人が外に出る態勢を」と求める提案が住民からあった。 十七日、親子で「家」を訪ねるウオークラリーを保護者らが初企画。PTA副会長の岡下弘美さん(41)は「地域が見守ってくれる中で取り組めるのは理想的」と喜ぶ。 「家」は一九九七年の神戸児童殺傷事件を機に全国にできた。同年十月には、広島市西区庚午地区で登校中の女子児童らを狙った通り魔事件が発生。市青少年健全育成協議会の働きかけで、市教委がステッカーを作るなど各地に広がった。 だが、その後の運用は地域に任されているのが実情。市教委が把握している今年の活用事例は二件だけ。中区のある学習塾役員(46)は「学校から頼まれて登録したが、ステッカーを張るだけではあまり知られずもったいない」。安佐南区の防犯組合役員(64)は「結局留守がちで機能しないケースもある」と指摘する。 制度の先駆けとなった庚午地区で活動する西区青少年健全育成協議会の打越勲会長(66)は「ボランティアなので完璧な対応は難しい。パトロールなどとも併せ子どもと保護者、地域が三位一体で考えるべき」と訴える。 企業も対策に乗り出した。モスフードサービス(東京都)は今年二月から全国の千二百十七店舗を「こども110番の店」に。中国地方も六十七店舗が登録し、来年元日からは、子ども用防犯ホイッスルを各店の先着百人に配布し、「避難場所」として再認識してもらう方針だ。 (2005.12.14)
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