福山大 平教授に聞く ■通学路の「死角」再点検を
広島市安芸区と栃木県今市市で、下校中だった小学一年の女児が襲われ幼い命を落とした。登下校中の子どもの安全を、どう確保していけばよいのか。学校や地域、行政などが取り組むべき課題について、犯罪心理学が専門の福山大人間文化学部の平伸二教授に聞いた。(野田華奈子) ―二つの事件をどう受け止めますか。 「白昼の死角」で発生したと言われる通り、地域の監視性が薄くなったと感じる。核家族化などで、人と付き合う面倒を回避し、社会とのかかわりを持たずに生きる人が増えた。犯罪者を生み、犯罪を誘発しやすい社会構造が背景にある。 ―事件から浮かび上がった教訓は。 子どもを狙う犯罪者にとって、通学路は格好のターゲット。交通事故の危険が少ないなどの観点では安心でも、安全とは言い切れない。あらためて通学路の点検、整備を実施するべきだ。 子どもに興味を抱く小児性愛者は、実は多く潜在している。実態調査や専門の治療プログラムの研究を進めることも犯罪抑止につながる。 ―学校や地域、行政の果たすべき役割は。 犯罪者にとって有利な条件をそろえないよう、できるだけ多くの人が監視すること。例えば、下校時を町内放送などで各家庭に知らせ、時間帯に合わせてイヌの散歩や花の水やりに出るなど、犯罪者が近づきにくい環境をつくる。地域のみんなが参加できるシステムを構築するべきだ。 ―子どもには何を教えたらいいですか。 防犯ブザーなどを常備していても、犯罪者の巧妙な手口を見破るのは困難。県内で広がる「地域安全マップ」作りなどに子どもを参加させ、一緒に歩いて危険個所をチェックする。規範意識が高まる上、地域の大人にも監視意識が広がり、相乗効果が望める。子どもを社会から隔離しては本来の教育の目的が失われる。 ―家庭での心掛けは。 何でも親に話せるような信頼関係を日ごろから築く。しぐさや言葉の微妙な変化を見逃さぬようにする。性的な事件の数は被害の申告がためらわれるため、全体数が把握しにくい。子どもに落ち度はないことを理解し被害情報を学校や警察に正しく伝えれば、犯罪者の早期逮捕にもつながる。 (2005.12.10)
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