中国新聞


広がらぬメール利用校
不審者情報配信、費用や管理に課題


 携帯電話などのメールを使い、不審者情報を保護者や住民に学校単位で発信しているのは、広島県内では5%程度にとどまっている。県などは導入を推奨するが、費用面や個人情報の管理に課題があるとして行政や学校の動きが鈍いためである。広島市安芸区での女児殺害事件を受け、情報を迅速、正確に共有する方法として保護者らの関心は高まっている。(桜井邦彦)

図「不審者情報一斉配信の仕組み」

 事前にメールサーバーに登録した保護者らに対し、学校やPTAが情報を送信すれば、瞬時に行き渡るシステム。県や県警などは本年度から、「子どもの犯罪被害防止対策プロジェクトチーム」を結成。ホームページで、メールによる情報共有の実践例を紹介し、学校や地域での普及を目指している。

広島県内では5%

 チームによると、県内でサービスを提供しているのは特定非営利活動法人(NPO法人)や情報企業など三団体。しかし、あくまで各校に選択を任せており、契約している幼稚園、小、中、高校は計約七十校。県内の学校の5%にすぎない。

 県教委や広島市教委によると、不審者情報を保護者に連絡する方法はプリント配布や電話が多いという。しかし、留守家庭があると時間がかかり、正確さにも課題が残る。女児の通っていた小学校では「女児が事件に巻き込まれてけがをした」との電話連絡を深夜に受けた保護者もいる。テレビでは女児の死亡を報じていた時間である。

 しかしメールシステム導入に対して、肝心の学校側の関心はいまひとつ。小学生を持つ西区の主婦(40)は「不審者や防災情報を保護者間で共有するため、学校にメールを含めた緊急連絡網づくりを提案したら個人情報保護などを理由に拒否された」と首をかしげる。

 呉市はPTAや行政などが連携し、十一月半ばから同種のシステムを市全体で始めた。呉市教委学校安全課は「学校という小さな単位では、携帯電話を持たない家庭への配慮や、学校の予算不足など取り組みたくても課題が多いため、全市で導入した」。

低いITへの理解

 県内の小中学校約四十校に無料でメールシステムを提供している中区のNPO法人「フレンズ」の松ア則子代表理事(52)は「PTAからの要望で説明に行っても、権限を持っている校長や教頭がITへの理解が足りず、話が進まないことが多い」と嘆く。当面、従来の電話とメールの併用を進め、保護者の要望をかなえるよう助言する。

 しかし、事件を機に、状況は変わりつつある。ある業者には事件後、学校やPTAの問い合わせが約三十件あった。担当者は「防犯意識と危機感の高まりを感じる」と受け止める。文部科学省も二〇〇六年度概算要求で、メールの利用効果の調査研究費を初めて盛り込んだ。全国二十モデル地区のデータを分析。各自治体で役立ててもらう方針だ。

(2005.12.8)


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