助成金打ち切りで閉園へ ■「受け皿なし」保護者困惑 国と市連携の支援必要 広島市佐伯区のJR五日市駅前にある保育園が本年度末での閉園を決め、保護者が困惑している。電車通勤者に便利で、休日や夜遅くまで子どもを預かる施設が周囲にないからだ。経営を支える「駅型保育試行助成事業」としての助成金を、国が「役割を終えた」と打ち切るのが背景。子育てを支援するために始めた試行事業を、子どもの行き場を確保しないまま一方的に終える判断に、国や自治体の責任を問う声が出ている。(小川満久) 社会福祉法人・広島愛育会が経営する「駅前ひまわり保育園」。同駅前のビル一階にある。ゼロ歳から四歳児まで計二十四人を、八人の保育士がみる。休日保育や、愛育会が運営する他の施設よりも一時間長い午後八時までの延長保育を手掛ける。 同園は、認可外施設を対象とする厚生労働省の「駅型保育試行助成事業」の適用を受ける県内唯一の施設。開園した一九九五年二月から毎年、全事業費の約半分に当たる約二千三百万円を国などから受給。人件費や駅前の好立地の高い家賃などに充ててきた。
休日保育にも一役 休日保育を望む家庭は多い。二〇〇三年度の広島市の調査では、回答した約五千世帯の一割が月一回以上を求めた。しかし市は、休日保育を補助金の対象としていない。少子化の中、運営を市の補助金に頼る認可施設にとっては手が回らないのが実情で、休日に子どもを預かる認可施設は現在わずか三カ所。同保育園は国の助成事業を活用して、すき間を埋める役割も担ってきた。 国の事業廃止の背景には、九八年度の認可施設の設置に関する最低基準の緩和がある。園庭がなくても、近くに公園があればOK―などだ。認可施設になれば市から運営費が支給される。 市の認可得られず しかし、同園の近くに公園はない。保育スペースも限られるため、市が定める最低定員六十人もクリアできない。高い賃料もネックで市の基準では認可施設に移行できないわけだ。 厚労省は既に愛育会に事業廃止の方針を伝えた。同園への助成額の半分を占める事業安定調整費の千二百万円(〇五年度交付決定額)を、〇六年度から毎年20%減らし、〇九年度に全廃する。 愛育会の築地フサ子理事長は「助成金なしでは存続は無理」と話す。 「仕事続けられぬ」 保護者には戸惑いが広がる。二人を預け、夫婦でサービス業に携わる合田なおみさん(30)=佐伯区=は「日曜、祝日勤務が多い今の仕事は辞めざるを得ない。なんとか存続を」と願う。 国は規制を緩和し、自治体に裁量を委ねてきた。この間、休日保育に関して広島市は事実上、何の対策も取っていない。鳥取大生涯教育総合センターの村山祐一教授(保育学)は「本来、保育に責任を負うべき市が閉園前に対策を取るのが筋。少子化に歯止めがかからない中、国と市が連携し、きめ細かく支援する姿勢が欠かせない」と指摘している。
(2005.12.6)
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