本年度で退任 尾道・土堂小、陰山校長に聞く ■実践継続へ今春決心 「読み書き計算」の反復学習で知られる尾道市立土堂小の陰山英男校長(47)が、本年度限りでの退任を決めた。来年度から立命館大大学教育開発・支援センター教授に就任し、立命館小の副校長を兼任する。公立小では全国初の公募による就任から三年。退任の理由や県の公教育への意見を聞いた。(榎本直樹)
―退任は唐突とも思えますが、理由は。 以前から、学校教育についてアドバイスをするシンクタンクが必要だと感じていた。約一年前に立命館側から私の発想に合致する提案があり、今春に移籍を決心した。いずれは土堂小を離れる時が来るので、異動がないところで実践を継続したいという希望もあった。 また、昨年末ごろから健康面の不安も抱えていた。平日は勤務、休日は講演や執筆活動で休みがなく、血圧は上が一八〇、下が一二〇。血圧を測りながら仕事をする状況が続き、本年度が限界だと感じていた。 ―保護者にはどう説明しますか。 私の哲学を学んだ教員がいることを忘れないでほしい。一人が引っ張っている実践は長続きしない。教壇に立つのは教員たちで 、保護者の代表が学校運営に参加する仕組みも確立している。「陰山」は学校が変わるきっかけで、私が抜けても土堂らしさは失われない。 ―学区外から志望者を募る学校選択制の申請は四十三人と、昨年度に比べ十一人減りました。どう受け止めますか。 これまでが少し過熱気味だった。私の移籍に伴う減少だろうが、想定の範囲内で自分としては良い数字だと思う。陰山の顔よりも、土堂小の実践そのものを評価する保護者が四十三人もいると考えることもできる。やれることはすべてやり、一点の後悔もない。これで土堂らしさが失われるのならば私の敗北だ。 ―三年間、身を置いた県の公教育に関し意見することがありますか。 新しい教育を実践する最大の鍵は継続だ。私が山口小で実践できたのも十四年間、異動がなかったからだ。数年で教員の半数が入れ替わってしまうような環境では、個性的な学校づくりはできない。校長も学校の実践を校外にアピールしていく経営力が必要だ。 ―立命館で実践したいことは。 反復学習を指導するノウハウを身に付けた教員を育てたい。二〇〇七年度から団塊の世代が大量に退職し、教員の四割が十年間で入れ替わる。教育改革を実現しようにも、指導できる人材がいなければかなわない。将来は年間三百人を目標に「教師の卵」を育てて全国に送り出したい。 (2005.11.25)
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