中国新聞


和食育のススメ
福山平成大・鈴木客員教授が解説本


旬を味わう豊かさ説く

 福山平成大客員教授の鈴木雅子さん(65)が、幼い子を持つ母親向けに食育の在り方を解説した「子どもは和食で育てなさい」(カンゼン)を出版した。ごはんを中心とする伝統的な日本型食生活が、成長期の「心の健康」も育てると指南する。(野田華奈子)

「何をどう食べるかは、生きる知恵なんです」と食育の大切さを語る鈴木さん

 著書では「風土はFood(フード)」と題し、「人間は、誕生した土地で得られる旬のものを食べれば、体質にあった必要な栄養素が取れる」と説く。

 この数十年間で、欧米型の食生活へと激変した日本では、好きな物ばかり食べて必要な栄養素を摂取しない「現代型栄養失調」の子どもたちが増えた。

 タンパク質やビタミン類が不足すると、「イライラする」「すぐカッとする」など精神状態が不安定になりやすいことを、今までの研究や中学生のアンケートなどで実証している。

 こうした状況を防ぐためにも「米を主食に野菜、豆、魚介類などがバランス良く組み合わさった和食を取り入れることが大切」と日本型食文化への回帰を促す。各栄養素を多く含む食材や食べ方も紹介し、和食を作りやすくアレンジしたオリジナルレシピも九種類を載せた。

 鈴木さんが「食育」の研究を始めたきっかけは、約五年間のドイツ留学経験にある。家族のような付き合いだった下宿先の老夫婦から「その土地に応じた食生活」の原点を学んだ。例えば秋から冬にかけては、冬眠に備えて栄養をたっぷり蓄えたウサギやシカの肉を食べ、クリスマスには森で採れる木の実を詰めた焼き菓子を作った。

 鈴木さんは「旬の食材をできるだけ手を加えずに食べる生活の豊かさを知った」と振り返り、「日本は食材が豊富な国なのに、簡単に食文化が崩れてしまったのはもったいない」と嘆く。

 先日、大学で教えるクラスで和食の「煮しめ」について問うと、二、三年生の約四十人全員が知らなかったという。

 「私たちの世代が伝えてこなかった責任もあるが、若い人は食の知識があまりにも乏しい」と鈴木さん。「食育は心と身体の健康を保持する『生きる知恵』の一つ。多くの人に関心を持ってほしい」と呼び掛ける。  二〇七ページ。千三百円。


 鈴木雅子(すずき・まさこ) 1939年生まれ。医学博士。専門は病態栄養学。京都薬科大卒業後、西ドイツ(当時)のハイデルベルク大医学部に留学。岡山大医学部専攻生を経て、77年から2004年3月まで福山市立女子短大教授。同年4月から福山平成大客員教授。NPO法人日本食育協会の理事も務める。著書は「ココロとカラダを育てる食事」など多数。福山市在住。

(2005.11.24)


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