中国新聞


公害のない古里/農業見直す時が来る
児童の提言集 30年ぶり発行
三次和田自治連


 今に生きる課題

 三次市和田地区の和田自治連合会が、一九七五年に和田小(向江田町)の五、六年生が書いた文集「私たちの提言―こんな農村社会にしてください」の復刻版を発行した。三十年前の小学生たちが地域に求める姿は「公害のない、美しい自然を残して」「楽しい農業にすればいい」―。今もそのまま課題に挙げられる内容が目立つ。

 四十人が執筆。当時、近くに工業団地の建設計画があり、中国道や農免道など道路整備が進み、コメの生産調整も本格化していた。

 子どもたちは、農業の状況についてコメの価格低迷を指摘。兼業農家が増え「学校から帰っても誰もいなくて寂しい」との本音もあった。

 一方、開発による騒音や大気汚染、水質悪化を懸念。「川が汚れ魚が釣れなくなり、コメもできなくなる」「眠る時、やかましい」など訴えている。

 農業機械の低価格化や共同での大規模化も提言。「いつかきっと、工業をしている人たちが農業を見直す時が来ると信じている」との声もあった。

 復刻版は、同連合会が策定を進めているまちづくりビジョンについて相談していた時、メンバーが「昔、子どもたちの提言書を作ったことがある」と思い出したのがきっかけ。

 百部印刷。今後、書いた人を捜して、地区の応援団としてネットワークをつくっていく。

 六年だった同市和知、看護師角一里美さん(42)は「みんな将来をしっかり考えていたんですね。農業は機械化したが、後継者づくりが難しくなっている。魅力の持てる取り組みが必要」と話していた。

30年前の子どもたちの提言

●若者が意欲を持てる魅力あるものにしてほしい
●農畜産物の値段を上げて専業できるように
●交通の便を考えて土地や四季に合った農産物を作る
●耕地整理して共同で機械購入、大規模運営を
●食料危機も考え、輸入に頼らず国内でたくさん作ればいい
●工業をしている人たちが農業を見直す時が来ると信じている
●都会の人が農業に力を入れてほしい

●工場や道路建設で公害、交通事故が増えないでほしい
●緑の多い、魚の釣れるきれいな川にしてほしい
●おいしい空気や青空が見え、鳥の声が聞こえる古里に
●山を崩すと洪水が起き、工場の排水が都市を襲うのが心配

●学校から帰った時に誰か家にいてほしい
●米があるからパンを食べなくてもいいだろう
●農繁期に休日を設けてゆとりのある暮らしを
●川で泳げるようにし、果樹園や牧場を造って観光客を呼びたい

(2005.8.26)


子育てのページTOPへ