2004年度教員調査 ▽わいせつ処分は減少 子どもと人間関係を築けず授業が成り立たないなど、「指導力不足」と認定された公立の小中高校教員の総数は、二○○四年度に五百六十六人となり、○三年度より八十五人増えて過去最多になったことが九日、文部科学省の調査で分かった。
文科省は「○四年度以前に指導力不足とされ、研修を続けている教員が相当数いる上、教育委員会の認定が厳しくなったのが増えた原因。先生の話を聞く意識が薄れるなどの子どもの変化に、指導方法が追いつかない教員もいる」としている。 わいせつ行為やセクハラ(性的嫌がらせ)で処分を受けた教員は○三年度より三十人減の百六十六人だった。 指導力不足の認定があったのは、人事権を持つ都道府県と政令指定都市の計六十教委のうち長野県とさいたま市を除く五十八教委。新たな認定者は○三年度比二十五人少ない二百八十二人だった。指導力不足から、百九十人が教員を辞めたり、職員に転任。このうち、最終的な認定前に退職した教員が七十八人。認定後に依願退職した教員が九十九人、分限免職十一人、懲戒免職一人、転任一人だった。 教委別で認定者が最も多かったのは、横浜市の二十七人。次いで千葉県と三重県二十五人、熊本県二十三人、広島県二十人の順。 わいせつ行為などで処分を受けた百六十六人のうち、懲戒免職は九十五人(○三年度百七人)、停職は三十人(同四十人)。49%は高校の教員だった。 また、新任の教員が、一年間の条件付き採用後に正式採用とならなかったのは百九十一人に上り、○三年度の百十一人から急増した。中でも精神疾患などの病気で依願退職に至ったのが六十一人(○三年度十人)で、自殺した人も四人いた。 ■漢字書けず 実験も苦手… 研修受けても1/3が退職 小学校の漢字テストの正答率が半分以下。理科の実験で予想外の結果が出ると説明できない。子どもと話せない。昨年度、指導力不足と認定されて研修を受けたものの、効果が見られずに免職になった教員の例だ。研修受講者の行く末は現場復帰か、翌年度も研修継続か、退職か、ほぼ三分の一ずつに分かれる。 東京都教職員研修センターでは、模擬授業や教え子を理解するための討論などが行われている。「子どもがけんかした、と親が怒鳴り込んできた」。保護者役と教員役で立場を入れ替え、両面から気持ちを考える。こうした研修はどの都道府県も実施している。 でも「授業の腕を上げるのは比較的容易。それより、子どもとのコミュニケーション能力が欠けている教員が多く、対処が難しい」とある研修担当者は話す。 一方、指導力不足とされた教員が「判定方法が不透明だ」と不満を持つケースも出ている。 神奈川県立高の男性教員(51)は三年前、「不適切な言動が多く、学校運営に影響を与えた」として、指導力不足とされた。 教員は「虚偽の事実を並べられ、自分の意見は聞いてもらえなかった」と提訴。弁護士は「校長に批判的とみられたのが原因としか思えない。判定会は書類を短時間で審査しただけ」という。
(2005.8.10)
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