文科省方針 序列化に懸念も 義務教育改革の一環として検討されている全国学力テストについて、文部科学省は九日、二○○六年度から実施するための関連経費を来年度の概算要求に盛り込む方針を固めた。対象となる学年のすべての児童生徒にテストを実施する全員調査を目指す。 中学生を対象にした初の一斉調査は一九六一年度に実施されたが、教育統制の恐れがあると反対運動が起こり、六四年度を最後に廃止された。学校間の序列化を招くとの懸念も根強いため、文科省は実施方法を中教審に諮った上で、八月までに骨格を固める。 全国学力テストは昨年十一月、中山成彬文科相が「子どもたちに競争意識を持たせることが必要」と実施の意向を表明。経済財政諮問会議も「学校評価のために全国学力調査を実施し、学校間の競争を促進する」と市場原理を導入する立場から実施を求めている。 文科省は小五と中二など小学校一学年と中学一学年での実施を想定。対象が二百万人を超え作業量が膨大になるため、実施主体は国立教育政策研究所のほか民間業者への委託も検討している。 結果は実施から三カ月程度の短期間で返却、都道府県間の比較データも得られるようにする。 テストの教科は小学校四教科、中学校五教科が一般的だが、採点作業の兼ね合いから科目数を絞ることも考慮。昨年十二月に公表された経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)の結果、読解力の低下が指摘されておりPISA型の問題も含めたい意向だが、問題作成に時間がかかり、導入できるかどうかは未定だ。 小五〜中三の約一割の児童生徒を抽出して行っている現行の教育課程実施状況調査は、将来的には全国学力テストに一本化される可能性もある。 文科省は「個々の児童生徒の到達度を把握し、指導や改善に生かすのが目的」としているが、全員調査では理論上、全参加者の順位が判明する。
(2005.7.10 共同通信)
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