小児科 多様なサービス 広島市や近郊の開業医 少子化や共働き家庭の増加を受け、広島市や近郊の小児科開業医の診療サービスが多様化している。保護者が働いている間、病気になった子どもを預かってくれる病児保育室をはじめ、待合室での保育、休日診療など、利用者ニーズを考えた取り組みが広がりつつある。(梨本嘉也) 共働きニーズに対応 行政の支援を望む声も
広島県府中町のJR矢賀駅近くで開業四年目を迎える「ますだ小児科」では、二年前から待合室に保育士を常勤させている。保護者が問診票を記入している間に検温を済ませたり、一緒に遊んだりする。患者が多い午前中は診察室で服の着脱など診療介助もする。 子ども二人を連れて訪れた広島市東区の主婦江守みゆきさん(28)は「二歳の長男は動きたい盛り。絵本を読んでもらえるので助かります」と喜ぶ。 四人いる保育士は、設置四年目を迎えた病児保育室と待合室と交代で勤務する。増田宏院長(45)は「待合室で保護者から質問を受けた時にアドバイスして、不安を取り除いてあげられる」と狙いを話す。 ○ネットで予約 同じく病児保育室を運営する安佐南区の「高橋内科小児科」も、四月から週一回の乳児健診で待合室での保育を始めた。保育士が待ち時間に手作りのガラガラや積み木などで子どもと遊ぶ。 「核家族も多く、子どもとの遊び方が分からない保護者も多い。親子関係を深めるヒントになるような遊びを取り入れたい」と保育士の坂本悦代さん(41)は意気込む。 水ぼうそうやはしか、おたふくかぜ…。小児科は感染症の患者が多いのが特徴だ。同区の「たなべ小児科・内科」では昨年秋から、再診患者を対象に、電話とインターネットの二十四時間予約システムを導入した。 インフルエンザが流行した今年一―三月は、一日平均の患者数は約百人。ウイルスが充満する待合室での待ち時間を短くすることで、感染を防ぐために始めた。 ○負担を少なく 設備投資にかかったのは約三百三十三万円。機材のリース料やプロバイダー料などで月約七万円とかなりの負担だ。それでも、田辺恭二院長(58)は「感染予防に加え、共働きの家庭も多いので、都合に合わせて予約を入れられる方が便利」とみる。 「ながたこどもクリニック」(佐伯区)では、十二年前の開業した時から、第三日曜を除く、日曜午前の診療を続ける。 小児科の休日当番は数が少なく、周辺の地理に不案内な患者にとって負担が大きい。永田忠院長(54)は「日曜はあそこに行けばいい、と患者さんに安心してもらいたかった」という。インフルエンザがピークだった三月の日曜日、半日で九十九人が詰めかけた。 広島県小児科医会の桑原正彦会長(68)は「少子化や共働きの増加の中、利用者ニーズに応えてサービスが充実するのはいい傾向だ。今後は病気の流行に運営が左右される病児保育室への支援や夜間対応できる態勢づくりなども課題だ。行政に働きかけながら取り組みたい」と話している。 (2005.6.29)
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