中国新聞


住民警ら 犯罪34%減
広島市安佐南区 モデル事業2年目


 ■参加促し定着へ正念場

 広島市安佐南区で進む「減らそう犯罪」県民総ぐるみ運動のモデル事業が二年目に入った。昨年六月、主体となる協議会が発足してから住民パトロール隊の増加など住民参加が広がり、犯罪の発生も大きく減った。モデル事業最終年の本年度、さらにすそ野を広げ、息の長い運動への道筋をつけることが課題となっている。(筒井晴信)

 「さようなら」「車に気を付けて」…。下校する大町小児童に住民ボランティアが声をかける。「子どもが狙われるケースが増えている。地域の安全のため自分らもできることをしないと」。大町学区防犯組合の牧里重喜組合長は力を込める。四月から週二回、住民八十人が学区内十四カ所で巡回、夜は昨年十一月から月二回、三十五人がパトロールをしている。

▽1年で7倍に

下校する大町小の児童を見守る住民ボランティア

 長男が同小に通う会社員島岡純一さん(45)は「子どもの安全は常に気掛かり。活動が活発になったことで日常生活の安心感が全く違う」と強調する。

 県警によると同区の昨年の刑法犯認知件数は三千二十二件で二〇〇二年に比べ34・6%減、〇三年比は22・2%減と効果は数字に出た。県全体の〇二年比25・3%減、〇三年比17・2%減に比べても減少幅は際立つ。

 その原動力が住民の自主パトロールだ。昨年六月には五隊計約百五十人だったのが、今年四月には四十八隊、計約千百人に。活動の輪が広がり、一年弱で参加者は約七倍になった。「犯罪の最大の抑止力」と広島北署の加藤博時地域官。住民をバックアップするため、どんな犯罪が増えているか、情報をこまめに提供するなど連携を強化している。

▽なお空白学区

 企業も動きに呼応。第一タクシー(同区相田)は、車体に「減らそう犯罪」をPRする塗装をしたタクシーとバスを走らせる。金融機関に向かう乗客には振り込め詐欺への注意も呼び掛ける。中冨祐二社長は「企業には企業の役割がある。それぞれの立場でできることをしていくのが運動の基本、成果につながると信じている」と言う。

 しかし、パトロール隊が結成されているのは二十四学区中十七学区で、目標の「全学区で結成」は実現していない。メンバーも五十歳代以上、男性が主体で、若い世代や女性の参加が少ないなど課題が残る。協議会が防犯少年団「安佐南まもるんジャー」を結成したのは、次代の防犯を担ってもらおうとの思いから。「活動の定着にはすそ野を広げ、活動が継続できるような仕組みづくりが必要」。協議会の水山芳徳事務局長は最終年の目標を掲げる。

▽契機づくりを

 本年度、情報提供をきめ細かくするため公民館や学校、病院などに情報ボードを設け、パトロール隊への研修など活動支援も続ける。大学生など若者の参加も促す。児童館で紙芝居を使って子どもへの安全教育に参加してもらう計画もある。

 水山事務局長は「住民から自発的に出た、地道な取り組みこそ大切」と、住民の動きを支えていく重要性を訴える。地域の安全を守るには、より多くの市民が参加できる機会をつくることが必要だ。誰でも気軽に活動に入っていける環境づくりや、運動を長く続けられるような支援の方法を工夫する必要がある。

(2005.5.9)


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