広島県歯科医師会 「かかわり方」マニュアル作成 ■虫歯放置や口内傷 健診で兆候指摘 児童虐待が増え続ける中で、歯科医の役割が期待されている。子どもの虫歯や口の傷が放置される背景には、親の養育放棄(ネグレクト)が潜むケースも少なくないからだ。広島県歯科医師会はこのほど、児童虐待防止対策への歯科医のかかわり方をまとめたマニュアルを作成した。日常診療だけでなく、幼児健診や学校健診の重要性を強調している点が特徴だ。 (編集委員・山内雅弥)
歯科医は日々の診療に加え、幼児健診や保育所・幼稚園・学校での健診を通じて、子どもに接する機会が多い。マニュアル作成に当たった同県歯科医師会専務理事の荒川信介さんは「全体として児童の虫歯は減少傾向を示しているのに、極端に虫歯が多く、重症化している子どもを学校健診などで見掛けることがある」と指摘する。 虐待を受けた子どもと口内の状態の関連は、東京都の実態調査などから、次第に明らかになっている。それによると、六歳未満の幼児では、約半数に虫歯があり、虐待を受けていない子どもに比べ二倍以上。一人当たりの虫歯の数も約三本と三倍を超え、治療せずに放置されている割合も高いことが分かった。 歯肉の炎症や歯肉炎、口の中や唇の打撲・傷なども虐待とのかかわりが深いとされる。口の状況だけでなく「おどおどしている」など、健診に訪れた親子の不自然さから気付くことができるケースもあるという。 広島市歯科医師会が昨年、市の一歳半児健診と三歳児健診に合わせて取り組んだモデル事業で、受診した幼児六百九十八人中二十六人(3・7%)が、養育放棄や困難が疑われる「要支援」と判定された。このうち五人は、健診に当たった歯科医が気付いたケース。荒川さんは「歯科の視点からの情報が、きっかけの一つになっていることが示された」とみる。 マニュアルは「子どもたちの笑顔 みんなの宝〜子育て支援デンタルネグレクトからの気付き」というタイトルで、二千二百部作成。県内の歯科医院や市町、教育委員会にも配布する。荒川さんは「地域の歯科医が意識を持って健診や診療に当たり、少しでも虐待を思わせる兆候があれば、関係機関と積極的に連携して早期対応や支援に努めたい」と話している。
(2005.4.20)
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