カナダ生まれの親教育プログラム広がる 子育て奮闘中の母親たちが、悩みや体験を分かち合い、自信と安心を獲得していく―。そんなカナダ生まれの親教育プログラム「ノーバディーズ パーフェクト(NP=完ぺきな親なんていない)」が、中国地方で広がり始めた。前向きに胸を張って、と新米ママたちを元気にしていくプログラム。このほど、広島市内で初めて開かれた講座を見学した。(木ノ元陽子) ■妻として母として 自分見つめ一歩ずつ前進
安佐南区保健センターが一〜三歳児の母親向けに開いた六回講座。最終回だったこの日、十二人の受講生が全員、顔をそろえた。用意された託児室にわが子を預け、駆け足でやってくる。テーマは「夫との関係」―。 話を聞いてくれない。家事も育児も知らんぷり。子育てに追われると夫婦仲もぎくしゃくしがち…。「私から何かを変えよう」。参加者は最初の講座で自分に宿題を出した。「朝、パジャマ姿で見送らない」「結婚前のように呼んでみる」などを試すこと十日。最終回で、その成果を発表し合った。 みんなで円を描くように座る。NPの特徴はファシリテーターという進行役がいること。臨床心理士の澤田章子さん(50)と高見千加子さん(37)の二人が務め、言葉を引き出していく。 「会社から帰宅した夫に矢継ぎ早に話をしていた。まずお帰り、お疲れさまと言い、夫の話を聞こうと決めた。初めて具体的に仕事のストレスを話してくれた」。一人の発表にみんなから「すごい!」と拍手が沸いた。 澤田さんは「育児の悩みや不安の原因は自分の弱さではない、誰もが直面する自然な課題。対話を通じて、それに気付き、具体的な解決のスキルを学び合うネットワークが生まれる」と話す。 「講座は、自分の子育てを客観的に見つめる場になった」と、受講生の主婦米原法枝さん(33)。かつて、育児への自信を失いかけていた。 三歳半の長女が甘えてじゃれてきた時、忙しくてかまってやれなかった。娘は「ママ、大好きなのにぃ…」と泣いた。きちんと向き合わなきゃと分かっていながら、実践できない自分に落ち込んだ。 大事なことはベストを尽くす。一つずつ母としてのステップを踏めばいい―。講座に参加して気付いた、という。「人に解決策を求めず、冷静に自分で考えてみよう。そんな前向きな気持ちになれました」 NPは一九八〇年、初めての育児に不安を抱え、途方に暮れる若い親を支援しようと、カナダ保健省などが開発した。必要に応じて専用テキストをひもときながら、対話を通じて育児のノウハウを学ぶ。 日本でも学識経験者や医療関係者などが中心となり、昨年四月、「NP―ジャパン」を設立。東京都と奈良県の子育て支援団体が事務局となり、ファシリテーターを認定している。 中国地方のファシリテーターは広島二人、岡山四人、山口三人、島根二人。育児に悩んだ母親による子ども殺害事件が相次いだ山口県では八月、山口市が県の補助を受けてファシリテーターの養成講座を開催。本年度内に連続講座を開く。 澤田さんは「講座を開くにはファシリテーターや託児ボランティアが必要で、人材の確保と資金調達が課題。行政と一緒に気軽に参加できる場を」と願う。 NP―ジャパンのホームページは、http://homepage3.nifty.com/NP-Japan/ (2005.4.18)
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