広島県立広島商高校 仕事体験発表会 フリーターやニートと呼ばれる若年無業者の増加を受け、生徒の勤労観や職業観を育てる「キャリア教育」が広がりを見せている。「キャリア教育日本一」を目標に掲げる広島県立広島商高(広島市中区)は、インターンシップ(就業体験)を柱に、実践を重視する。生徒たちは実社会との距離を縮める一方、自分の考えを伝える力など課題を自覚しているようだ。一月末、同校であった「仕事体験」の発表会を訪ねた。 (金刺大五)
敬語に苦戦/体力いる/資格必要
会場の体育館には、生徒や受け入れ先の企業関係者ら約千人が集まった。昨年の夏休みに三日間程度、百十八の企業・団体で実習したのは二年生約二百人。うち八人が体験を発表した。 ○商業科 上手陽子さん(16) 三菱重工業広島製作所(西区)で事務の仕事に携わった。電話応対など慣れない仕事に緊張した日々。二枚以上の書類はクリップで留める、廊下でお客とすれ違う時は立ち止まって一礼するなど、社員の気配りやマナーは印象的だった。正しい言葉遣いや時間厳守などが、社会に出た時の基礎になると実感した。 敬語には苦戦した。正しく使えないと会社のイメージを損ねてしまう。希望する医療の事務職に就くためにも、大きく明るいあいさつを心掛け、言葉遣いを勉強したい。 ○商業科 友池啓恵さん(17) 有料老人ホーム「ほのぼの苑」(安佐南区)で、介護の仕事を体験。食事の介助をしたり、ベッドのシーツを交換したり…。夕方まで、あっという間に過ぎた。体力も必要だった。 耳の不自由な高齢者に、遠くから声を掛け、伝わらなかった。一人ひとりの体の具合を把握し、思いやる心がないと信頼関係は築けない。介護士さんからは「お年寄りを親と思って接しなさい」と注意を受けた。 保育士になりたい。職場、利用者から信頼される人材になるため、責任感を強く持ちたい。 ○会計科 前本祐輔さん(17) 上田・土沢法律事務所(中区)で実習。弁護士に同行し、民事裁判を傍聴したり、事務所で請求書のあて名書きを手伝ったりした。社会で即戦力になるためには、高度な資格の取得が必要と実感した。将来の夢は税理士。簿記一級など、多くの資格取得を目指す。
■将来生き抜く力の基礎を 上野原作校長に聞く キャリア教育の意義や取り組みなどについて、県立広島商高の上野原作校長(58)に聞いた。
―推進の狙いは何ですか。 将来を生き抜く力の基礎基本をつけたい。社会人、職業人として自立するために高度な専門知識や技能、マナーを身に付けることが、学習意欲の向上にもつながる。その場の設定や助言をしながら支援するのが学校の役割だ。 ―インターンシップに力を入れる理由は。 百聞は一見にしかず。将来の就職への実感がわき、職業適性も見えてくる。敬語やマナーの大切さを知り、働く喜びや厳しさ、仕事への誇りを実感してくれればと思う。 ―若者の高い離職率をどうみていますか。 若者が抱く働くイメージと、企業側の求める人材とのミスマッチが原因。生徒は何がしたいのか、どんな職業に向いているのかを把握し、就職したらプロとしての自覚を付けないといけない。進路指導では、生徒の視野を広げ、自立を促す指導を心掛けている。 ―「キャリア教育日本一」を目指す具体的な取り組みは。 一年生では適性検査を実施し、性格や職種の向き不向きを知る。二年生は経験を重視し、インターンシップ後は、実習成果や今後の決意を報告書にまとめる。三年生は、起業家講座やビジネス実務のマナー講座など専門的な授業を受講し、応用力を付ける。また、三年間を通じ、資格取得や「広商デパート」の開催など実践的な教育を展開している。 ―キャリア教育の今後の課題は。 小、中学校から発達段階に応じ、積み重ねる必要がある。就業体験や見学の受け皿づくり、しつけなど企業や地域、家庭との連携が欠かせない。 (2005.2.7)
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