中国新聞


虐待・少年事件
子どもの心療科確立へ
厚労省が体制整備 専門医を養成


 児童虐待や少年事件の増加など「子どもの心」をめぐる問題が注目される中、厚生労働省は二十七日までに、「子どもの心の診療科」(仮称)を診療分野として確立し、全国的な体制整備に乗り出すことを決めた。欧米より立ち遅れていたこの分野に、国として初めて取り組むことになる。

 三月上旬にも有識者の検討会を発足させ、不足している専門医の養成システムや、小児科医らに診療技術を普及する研修体制づくりなど対策をまとめる。関連学会には正式な診療科を目指す動きもあり、厚労省は診療科指定の是非も議論し機運を加速したい考えだ。

 厚労省母子保健課などによると、虐待の増加で心に傷を負った子どものケアが急務となり、摂食障害や「キレる子」への対応も求められている。自閉症や注意欠陥多動性障害(ADHD)といった発達障害への取り組みも重要な課題で、早期発見とケアが大切なのに診断できる医師は少ない。

 子ども専門の精神科は欧米では確立した分野だが、日本では医療法上、広告できる診療科に認められていない。専門の児童精神科医の診察を受けるには三カ月―半年先の予約待ちというケースもあるという。

 検討会はこうしたニーズに対応し、小児科医や精神科医の研修体制を整えてすそ野を広げる方策を検討。文部科学省と協力して医学部への講座新設など専門医養成システムも話し合い、〇五年度末に結論をまとめる。

 日本児童青年精神医学会(牛島定信理事長)など関連三学会も、日本学術会議の下で初めてスクラムを組み、小委員会を設置。必要な専門医の人数を試算中で、九月までに診療科指定などを提言するという。厚労省はこうした動きも受け、診療科指定や臨床研修プログラムへの追加なども検討会で議論する。


児童精神科医 子供の心の傷や病気など精神面を診療する専門医。欧米では大人向けの精神科とは別に、医療分野として確立している。日本は極端に少なく、日本児童青年精神医学会の認定医は全国で約100人だけ。虐待や摂食障害、非行などの対応のほか、阪神大震災や新潟県中越地震ではトラウマ(心的外傷)を負った子供の心のケアも重視された。名古屋大病院などが専門科を開設しているほか、東大が2005年度に「こころの発達臨床教育センター」を設置するなど近年取り組みが広まりつつある。

(2005.1.28 共同)


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