中国新聞


子供の心の専門家養成
東京大、初のセンター開設へ


 自閉症や注意欠陥多動性障害(ADHD)など発達障害のある子供に、医療や教育の現場で対応できる専門家を養成するため、東京大は全国初の「こころの発達臨床教育センター」を二〇〇五年度に開設することを、二十六日までに決めた。

 医師や児童心理士、教員らが、最新の児童精神医学や脳科学の研究成果を基に、発達障害の診断やカウンセリング手法などを習得する。

 少年犯罪や学級崩壊、いじめなど子供の心と行動に関係する問題に対して、教育現場では他人への思いやりや命を大切にする「心の教育」の充実策がとられている。

 しかし、センター設置を進めている東大精神神経科の加藤進昌教授は「自閉症やADHDなどの精神医学的な要因が、こうした問題にかかわっている場合もあることが分かってきた」と言う。

 予防には、障害を早期発見し治療やケアを始めることが重要だが、日本では児童精神科医が大幅に不足。教育現場でも、対応について専門的な知識を持った教員はほとんどいないのが現状だ。

 センターでは、教育学の専門家と連携し、家庭、地域、学校、医師の間の橋渡し役となる「特別支援コーディネーター」を養成。養成プログラムの作成と普及も図る。また、児童精神科の専門医の養成コースを設置し、脳画像を使った診断法や、遺伝子、環境情報に基づき個人に合ったテーラーメード医療を実現したいとしている。

 スタッフや、受け入れの人数、期間は未定。将来は国の中核となる大学共同利用機関への移行を目指す。

 加藤教授は「社会に心の発達についての専門的視点を行き渡らせ、子供の健やかな発達と問題の早期発見・介入に役立てたい」と話している。


発達障害 昨年末に成立した発達障害者支援法は、自閉症やアスペルガー症候群、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などと定義している。知的障害を伴わない自閉症や、さらに言語発達も良好なアスペルガー症候群は、他人とコミュニケーションがうまくとれなかったり特定のことに強い関心を示したりするのが特徴で、周囲の誤解を招きやすい。ADHDは落ち着きがなく席に座っていられないなどの症状。LDは特定分野の学習に困難を伴う。同法成立で、適切な教育や医療につなげる体制づくりに道が開かれた。

(2005.1.27 共同)


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