「虐待に気付いた」4割 広島文教女子大・吉田助教授ら
広島県の保育所を対象にした調査で、「(この一年間に)保護者による児童虐待に気付いたことがある」との回答が四割に上った。調査した広島文教女子大の吉田あけみ助教授(家族社会学)らは「潜在している虐待はもっと多いはず。保育所は積極的な対策を」と呼び掛けている。 男児に暴力 女児は無視 ―積極的対策を呼び掛け
調査は昨年夏、県内にある全保育所六百三十五施設を対象に郵送で実施。二百八十二施設から回答があった。回答者は所長(55%)、保育士(38%)ら。 「この一年間で虐待に気付いたことがある」は44・1%。「一件」が最も多く22・4%、次いで「二―四件」が17・4%だった。 内容は、「子どもを罵倒(ばとう)する」虐待には34・4%が気付いたことがあり、以下気付いたことのあるケースとして「子どもに暴力をふるう」(31・2%)「子どもに食事を与えていない」(19・1%)「子どもを無視する」(18・8%)となっている。 虐待の程度がひどかったなど「一番印象に残っているケース」の被害者は男児49・6%、女児44・3%。加害者とみられる人は実母が67・2%、実父が26・7%だった。子どもと両親の家庭が半数を占めているが、虐待発生率ではひとり親家庭が高かった。 男児では実父が暴力をふるうケースが多い。一方、「無視する」「食事を与えない」といった「ネグレクト」の被害は女児に多く、期間も長期化の傾向。直接的な暴力を受ける男児に比べて、女児の場合は周囲が虐待に気付きにくい実態が浮かび上がった。 吉田助教授は母親の虐待が多かったことについて「子育ての役割を母親が一人で担わされていることの表れ」と分析。「母親の育児負担を減らすために、父親への積極的な働き掛けが必要だ」と指摘する。 昨年十月、改正児童虐待防止法が施行され、保育所は虐待に気付いた場合は児童相談所などへ通告義務を負うとともに、防止のための啓発活動に努めなければならない―とされた。 「虐待の事実が見えにくいケースにも気を配るなど、実態に沿った虐待対策に積極的に取り組んでほしい」と吉田助教授は話している。 (2005.1.22)
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