広島大学病院小児科 小林教授に聞く
本格的な寒さの到来とともに、インフルエンザの季節がやってくる。抵抗力の弱い高齢者や乳幼児にとって、重症化すると命を落とすこともある怖い病気。流行に備え、ワクチン接種などの予防が重要。広島大病院(広島市南区)小児科の小林正夫教授にアドバイスしてもらった。 (伊藤一亘)
■感染後は水分と安静を インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる急性の呼吸器感染症。感染すると一〜三日の潜伏期間を経て三八度以上の発熱や全身倦怠(けんたい)感、筋肉・関節痛などの症状が出る。例年、十一月下旬から十二月初旬にかけて流行が始まり、年明けから患者が急増する。 ▽既に流行の兆し ところが、今季は既に大阪、名古屋、東京で一足早い流行の兆しが表れている。小林教授によると「A香港型のウイルスが検出されている。流行予測によるワクチンも同型なので、予防接種は効果的だ」という。 ただ、予防接種は効果が出るまで二週間程度の期間が必要。また小児の場合は、一〜四週間の間隔で二度接種する必要があり、早めの対策が必須だ。 特に小児と高齢者への配慮が大切だ。 小児の場合はインフルエンザに伴う脳炎・脳症の恐れがある。「急激に発症するため、早期の発見、治療は難しい。予防接種により、重症化を防ぐことが最大の防御策」と小林教授は話す。 ▽解熱剤には注意 さらに、解熱剤の使用には注意したい。もし使う場合は、アセトアミノフェンを推奨する。「他の解熱剤では、逆に脳炎・脳症を招く恐れがある。以前もらって取り置きした薬などは使わないでほしい」と呼び掛ける。 高齢者の場合は、呼吸器や循環器に持病があると症状が悪化したり、肺炎などの合併症を起こしたりしやすい。 実際、インフルエンザが流行した年は、通常より高齢者の死亡率が高まるといったデータもある。「他のウイルス性肺炎を合併すると危険。高齢者に多い肺炎球菌による肺炎を予防するため、同球菌ワクチンを接種しておいても損はない」と勧める。 もし、インフルエンザに感染、発症したら、安静第一で水分補給に気を付けよう。現在は診断キットがあるためインフルエンザかどうか早めに判断でき、抗インフルエンザ薬などで症状を軽くするとともに、早く治すこともできる。 一方で、予防接種はインフルエンザ対策の基本としても、重症化や合併症を防ぐ効果が主で、感染や発症そのものを完全に防ぐわけではない。「手洗いやうがいが大切。特に保育所や学校などでは徹底してほしい。十分な栄養と睡眠にも配慮してほしい」と強調した。 広島県の感染症予防研究調査会の委員長を務める小林教授は「予防接種が任意になって以後、流行が起こりやすくなっている。九月から県感染症情報センターのホームページ(HP)を開設しているので、知識を高め、情報をチェックするため、活用してほしい」と話している。HPアドレスは、http://www.pref.hiroshima.jp/hec/hidsc/
(2004.11.24)
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