連携し効果的配置を 社説 中国地方で地域の中核となっている三病院の産科が今月末、廃止や休止に追い込まれる。四月から新人医師の臨床研修が必修化されるのに伴い、大学病院の医師引き揚げなどで後任医師が見つからないためだ。安心して生み育てられる医療体制に向け、行政・大学・医療機関が一体となった取り組みが急がれる。 へき地を中心に医師不足は深刻である。中国五県でも過去三年間で産科・産婦人科・婦人科が各二科、小児科五科など合わせて十三病院が十六科を休止・廃止している。相次いで発覚した「医師の名義貸し」も、慢性的な医師不足の一端を浮き彫りにした。 医師法の改正で、今春から医師国家試験に合格した新人医師は初期診療の総合力を高めるため二年間、産婦人科や小児科など七分野での臨床研修が義務付けられる。昼夜を問わない過酷な職場。医療訴訟も多い産科や、少子化を見越して小児科を敬遠する医学生も少なくないと聞くが、若手医師には両科の魅力を再認識するチャンスとなり、中長期的には地域医療の医師確保につながる期待もある。 しかし当面は、大学病院などは医師のやり繰りが難しくなり、派遣していた中核病院からは医師を引き揚げざるを得ない。こうした事態は当然、予測されたはずである。だが、国が「医師会、大学、中核病院などで構成する協議会を設置し、医療提供体制を検討するよう」と都道府県に通知したのは先月末。あまりにも遅過ぎる。早急に具体案を示したい。 ポイントは限られた人材をいかに効率よく、有効に配置するか―であろう。すべての中核病院が同じ態勢を望めば医師の奪い合いになってしまう。それよりもそれぞれの病院が専門性を高めた診療科を持てば、効果的な人材の配置ができるのではないか。同じ産婦人科でも不妊治療専門、婦人科専門…と役割分担すればいい。産科専門に医師を集中させれば二十四時間体制の過重労働も緩和されよう。 その際、医療機関のネットーワーク化が重要になる。情報システムの確立や急患の搬送体制の確保も不可欠だ。助産師会とも連携すれば、妊婦はより安心できる。 県単位のネットワークにとどまらず、広域的な連携も視野に入れたい。今回も岡山大の医師引き揚げで、JA府中総合病院産婦人科と因島総合病院産科が休・廃止になる。効果的な医師の配置を進めるには、県境を超えた情報交換が欠かせないだろう。 産科や小児科に多い女性医師の働きやすい環境づくりも急務である。次世代育成支援対策推進法では二〇〇四年度中に子育てしやすい環境を整備する行動計画の策定を求めている。該当病院には女性医師の勤務実態を考慮した計画策定を望みたい。 (2004.3.20)
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